梅雨明けは強い日差しと急な気温上昇に体がついていかず、毎年この時期に熱中症で搬送される人が急増します。「まだ6月」「少し外に出ただけ」と油断しがちな今こそ、熱中症対策が欠かせません。正しい知識と備えで、元気に夏を迎えましょう。
1. 熱中症に特に注意すべき時期は「梅雨明け」
熱中症が増えるのは真夏だけではありません。特に注意したいのが、梅雨の晴れ間や梅雨明けといった季節の変わり目です。この時期は、体がまだ暑さに慣れていない状態で気温が急上昇しやすく、熱中症のリスクが一気に高まります。
特に梅雨明け直後は、湿度が高く風通しも悪いため、体に熱がこもりやすく、軽い作業や外出だけでも熱中症になるリスクが高まります。
2. 熱中症を引き起こす意外な要因
熱中症を引き起こす意外な要因として、汗をかかない習慣があります。
汗をかくことで体内の熱を放出し、体温上昇を防ぐことができます。しかしながら、人間の体は「暑くなれば自然に汗をかく」というわけではなく、冬の間に閉じていた汗腺を徐々に開いていくことで、上手く汗をかくことができます。
冬場や比較的気温の高くない春の間は汗をあまりかかず、発汗作用があまり働きません。さらに、空調が整った環境にいる現代人は特に、汗腺が開きにくくなっています。そのため気温が急に高くなると、体温を調整する機能である発汗作用がうまく働かず、熱がこもって熱中症などが起こりやすくなるのです。
3. 今すぐ取り組める、熱中症対策の新常識
熱中症対策には、水分補給やエアコンの使用などが基本です。加えて、「汗をかける体づくり」と「効率的に体温を下げる工夫」を行うことで、効果的に予防できるでしょう。
①「汗をかける体」をつくる
ご紹介した通り、汗をかくことで体内の熱が放出され、熱が体にこもるのを防いでくれます。そのため、普段汗をかく習慣がない方は、ウォーキング・サイクリング・筋トレなど、1回30分、週5回程度の運動を取り入れて汗をかける体をつくりましょう。
難しい場合は湯船に浸かって汗をかくのも効果的です。汗をかいた後は水分補給も忘れずに行いましょう。
②手のひらを冷やす
手のひらは動静脈吻合(AVA)という構造により、熱の放散が効率よく行われる部位です。洗面器に10〜15℃の水をたらいに張り、約5分間両手を浸すだけで、簡単に体温を下げることができます。10℃以下の冷たすぎるものは逆効果になるため注意しましょう。
外出時は冷たいペットボトルを握ったり、手をこまめに洗ったりすることで手のひらを冷やすことができます。
③シャワーの回数を増やす
シャワーを浴びることで、汗の放散機能を補助して効果的に体温を下げることができます。海外の研究によると、シャワーの回数を増やすことで、熱中症の死亡リスクを68%も下げられることが分かっています。
外出後や作業後など、暑さを感じた後のタイミングでシャワーを浴びると良いでしょう。高齢の方や持病のある方は、ぬるま湯で無理のない温度設定を心がけましょう。
4. 実はNGな熱中症対策
話題の冷却グッズや、良かれと思っていた夏の行動が、実は熱中症対策の逆効果になっていることもあります。
乾いたタオルで汗を拭く
汗をかいた後にタオルで汗を拭く機会は多いものですが、乾いたタオルで汗を拭くと、皮膚の水分まで奪ってしまい、気化熱が発生せず体温が下がりにくくなります。水で濡らしたタオルで軽く拭くことで、水分が残りやすく気化熱によって体を冷やせます。
氷枕や冷却シート
氷枕やおでこの冷却シートは、寝苦しい夜も涼しく過ごすことができますが、冷やす範囲が限定されており、脳などの深部体温までは下がりません。そのため、太い血管がある首や脇の下を冷やす方が効果的です。
メントール入り冷却グッズ
ハッカ油などのメントール系の冷却グッズは清涼感がありますが、冷たいと感じさせる成分であるため、実際には体温を下げていません。さらに脳が「冷えた」と誤認識し、汗の分泌が止まり逆効果になる可能性もあります。
ハンディファン・ネックファン
携帯型の小型扇風機「ハンディファン」や、首に付ける「ネックファン」は、高温多湿の中で使うと熱風を体に当て続けてしまい、汗の蒸発を妨げることがあります。使用時は気温・湿度に注意しましょう。
5. まとめ
気温が急に高くなると、体温調整に重要な発汗機能がうまく働かず、体に熱がこもりやすくなります。特に梅雨明けの時期は、体がまだ暑さに慣れておらず、熱中症のリスクが高まります。
熱中症を予防するには、汗をかける体をつくることと、効率的に熱を逃がす工夫が必要です。水分補給やエアコンの使用といった基本対策に加えて、今回ご紹介したような日常に取り入れやすい方法を実践することで、より確実な予防につながります。
正しい知識を身につけて、今年の夏も健やかに乗り切りましょう。
参考:
京都先端科学大学「本学では真夏の熱中症から学生たちを守る「手のひら冷却」を導入しています【SLS】」