疲れは誰にでも起こる自然な反応ですが、「少し休めば大丈夫」と軽く見られがちです。しかし、疲労が積み重なると仕事や家事の効率が落ち、休日も思いきり楽しめなくなるなど、生活の質そのものを下げてしまいます。近年は、疲労の原因として活性酸素の関与が注目されており、その対策として欠かせないのが抗酸化作用を持つビタミンCです。今回は、疲労が体と心に与える影響や原因、そして疲労回復に役立つビタミンCの働きや上手な摂り方についてまとめました。
①疲労は体からのアラーム
「疲れ」とは、体や心に負担がかかった結果、仕事や家事の効率が低下する現象を指し、いわば「休め」という体からのアラームです。
疲労には、運動や労働などによる身体的な疲れだけでなく、心理的ストレスなどによる疲れもあります。
疲れにより「だるい」「しんどい」と感じるのに、発熱や痛みのように危機感を持つ人は少なく、体温計のように数値で測れる指標もないため軽視されがちです。しかし、疲労は放置すると心身の不調に直結してしまいます。
②疲労を放っておけない理由
疲労が続くと、思考力や注意力が低下し、行動量や作業量も落ちてしまいます。その結果、日常生活や仕事に支障をきたすだけでなく、社会全体に経済的な損失を与える要因にもなっています。
また、慢性的な疲れは心のバランスを崩しやすくします。普段なら気にならない小さなストレスにも過敏に反応したり、攻撃的になったりすることもあります。さらに、心の疲労は自律神経を乱し、免疫力を低下させて感染症や生活習慣病を引き起こす原因にもつながります。
③慢性疲労の原因
疲労を引き起こす要因は、精神的なストレスや長時間労働といった身体的ストレス、さらに紫外線や高温などの物理的ストレス、ウイルスなどの生物的ストレスなど、多岐にわたります。
共通しているのは「活性酸素」の存在です。過度なストレスや運動のしすぎ、偏った食事などによって活性酸素が過剰に発生すると、体内の抗酸化力が追いつかず、細胞のタンパク質や脂質がサビつきます。この酸化ストレスこそが疲労の大きな原因です。
加齢によって抗酸化力は徐々に低下するため、体の修復力も衰えます。細胞が傷つき、免疫細胞がその情報を脳へ伝えることで疲労の感覚が生じるのです。
③疲労回復にビタミンC
疲労の原因となる活性酸素を取り除くうえで重要なのが、抗酸化作用を持つビタミンCです。ビタミンCは体内で発生した活性酸素を除去し、細胞の酸化ダメージを防ぐことで疲労回復を助けます。
また、精神的ストレスがかかると、体内のビタミンCは大量に消費されてしまいます。食事からビタミンCをしっかり補うことが、ストレス対策にも直結するのです。
④ビタミンCの取り方のコツ
ビタミンCの1日推奨量は100mg程度ですが、疲労回復やストレス対策を考えると100〜1000mgほどが望ましいとされています。
ビタミンCサプリメントなどもありますが、野菜や果物など食品からとることで、ビタミンEやポリフェノールなどさまざまな栄養素をとることができ、組み合わせて摂ることで相乗効果も期待できます。
- ビタミンC × ビタミンE … 一緒にとることで、抗酸化作用がさらにアップします
- ビタミンC × ポリフェノール … ポリフェノールにも強い抗酸化作用があります
⑤疲労を感じるときこそ水分補給を
ビタミンCのほかにも、疲労回復には水分補給も大切です。古くから「疲れたら水を飲め」という言葉があります。水分は代謝を活発にし、老廃物を体外に排出するため、疲労回復の基盤になると考えられています。
水分不足は血液の流れを滞らせ、細胞に酸素や栄養が届かなくなるだけでなく、老廃物がたまり、疲れが慢性化する原因になります。腎臓や肝臓が、筋肉や脳の「代謝のゴミ」を片付けるためにも、水は欠かせません。
さらに、水分不足は自律神経の切り替えを妨げ、休んでも疲れが取れない状態を招きます。だからこそ、日常的にこまめな水分補給が必要です。
30分おきにコップ半分の水を飲むなど、意識して水分を補給しましょう。
参考:
城西大学「004_【基礎研究の視点から】疲労について①」
関西福祉科学大学「知っていますか疲労の真実」
高齢・障害・求職者雇用支援機構「科学の視点で読み解く身体と心の疲労回復」
日本食糧新聞「疲れたら水を飲め・正しい水の補給法」