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リンパの重要な働きとは BY 豊岡 倫郎 氏  2023年8月29日

1. リンパの働きを見直す
 最近リンパの研究が進み、その働きが見直されている。健康管理のひとつとして、認識を深めて役立てよう。

2.リンパとは
 リンパとはリンパ管を流れるリンパ液のことであり、リンパ管は身体中に張り巡らされている管で、リンパ液は体内に侵入した細菌やウイルスをとらえてリ ンパ節に運んでいく。リンパ節は首や脇の下、そけい部などにあり、これらの異物とたたかう役割をしている。

3リンパ液の流れ
1)血液は心臓から出て、血管の中を流れていて、動脈から末端の毛細血管まで流れて、細胞に酸素と栄養分を供給して、老廃物と炭酸ガスを回収して、静脈を通じてまた心臓に戻ってくる。その間約40秒かかるという。

2)一方リンパ液の流れは、頭から手先、足先まで体中にリンパ管が張り巡らされていて、リンパ液の流れは、それぞれの部署のリンパ管の先端の毛細リンパ管がリンパ液の出発点となっている。そこからいくつかのリンパ管が合流して、リンパ節に流れ込む。体に約600個のリンパ節がある。更に下半身のリンパ液はお腹の真ん中にある乳び槽に流れて、胸の胸管を通って、左側の鎖骨の下まで流れ、そこで静脈に合流する。尚リンパ管は独自のネットワークで体内に張り巡らされていて、血管と並んで伴走していなくて、体内の浅いところも深いところにも通っている。

3)リンパ液の流れの原動力は心臓のようなポンプ作用がないので、筋肉の収縮や動脈の拍動や呼吸運動の圧力の変化、リンパ管の壁の収縮で流れて行く。リンパ管の内腔には半月弁が付いていて、逆流しないようになっている。リンパ液の流れは遅く、体内を1周するのに8~10時間かかる。

4)そもそもリンパ液がどのようにして、作られるのかと言えば、血液が毛細血管から漏れ出して、
各組織の細胞に前述したように、栄養と酸素、水分を供給するときに、全ての老廃物を回収するのではなく、一部10%位が組織液の残りの老廃物と水分はリンパ液として受け取り、流れる。

5)体の水分量は大体体重の60%位であるが、その内訳は血液(血漿)、組織液(間質液)、リンパ液、脳脊髄液からなる。
脳脊髄液は、24 時間で3~4 回入れ替わって、頭蓋骨から仙骨までを循環したあと、最終的に血液またはリンパ液に混ざる仕組みになっている。

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4.リンパ液の働き
1)血管から組織に出た水分(組織液)をリンパ管に集め、静脈まで運び,血液はその量を大きく増減させることなく、循環することができる。

2)免疫反応の中核を担い、免疫細胞の1つであるリンパ球は胸腺と呼ばれる器官で、自己と非自己を学び、的確な指令を出して、外敵から体を守る。

3)腸で吸収された脂肪分(乳糜(にゅうび))は腸のリンパ管に取り込まれ、胸管を通って静脈まで運ぶ。小腸の内壁にあるリンパ管は乳糜管(にゅうびかん)と呼ぶ。

4)タンパク質、有害な生物(ウィルスなど)、老廃物をろ過し,リンパ節内の免疫細胞が、タンパク質、細菌やウイルス、細胞の代謝から生じた老廃物などを攻撃し、最終的にリンパ液をきれいな状態で静脈へ戻す。リンパ系は体にとって下水道、浄水場のような存在である。

5.むくみ(浮腫)
 リンパ液は筋肉の運動で流れるので、 一日中立ち仕事や座りっぱなしや運動不足などが続くと流れが悪くなって、下肢や肩の周辺に溜まりやすい。リンパ管からにじみ出して足のむくみを引き 起こす。下肢にリンパ液が溜まりやすいのは引力の作用によるもので、肩に溜まるのは別の理由がある。リンパ節はリンパ管が集まった部分なので、リンパ液がとくに溜まりやすくなるが、その 多くが肩周辺に集中しているためで、さらに体内のリンパ管は最終的に肩の鎖骨下静脈という血管に繋がっているので、流れが悪いとリンパ液が周辺に溜まり、肩こりや筋肉痛の原因となる。しかしリンパのむくみは、一晩十分睡眠をとれば、むくみは解消する。むくみはリンパだけでなく血管、心臓、腎臓、代謝疾患に由来することもある。

6. リンパ節の腫大
 リンパ節の腫大は頸部や鎖骨上、腋窩(わきの下)、鼠径部などの表在リンパ節が大きくなると体表から触れるようになる。細菌やウイルスによる感染、炎症、腫瘍やがんの転移などの原因による。頸部では耳、鼻、のど、口腔(こうくう)内の病気や肺がん、乳がん、消化管がんをはじめとした悪性腫瘍、結核などが疑われる。鎖骨上や腋窩では上肢や乳腺の病気が考えられる。鼠径部のリンパ節の腫大では下肢や陰部、肛門などの病気を調べる。全身的に腫れているときには血液の病気や膠原(こうげん)病などが疑われる。異常に気が付いたら、すぐ病院へ行くとよい。

7.最近の研究で分かったリンパの重要な働き
 前述したように全身に張り巡らせたリンパ管のネットワークによって、細菌性やウイルス、ガンなどの疾病防止に関与している。
 ところが最近、脳自体にはリンパ管ネットワークはないが、髄膜(脳を包む結合組織性の膜の総称)のリンパ管が認知症など認知機能に関与していると。2018年8月Nature誌にバージニア大学が発表した。要するに髄膜のリンパ管の機能が衰えると、脳のたんぱく質の異常を起こすと。アルツハイマー病の予防のためには、このリンパ管の働きを活用すれば、アミロイドβの蓄積も起こらないかも知れないというもの。

8.リンパ活用対策
1)日頃リンパのことなど考えたこともない人達ばかりだが、信州大学教授、大橋俊夫著「リンパを流すと健康になる」と「腸のリンパを流せば、病気が逃げ出す」、紺野義雄著「即効解消のリンパマッサージ」によれば、体内でのリンパの重要な働きや解消策にも言及している。

2)よく腸内には免疫力の60から70%があるから、腸内環境を整えて、悪玉菌などが増えないようにしなさいと、言われているが、前述の大橋俊夫先生によれば、腸のリンパを流せば、細菌、ウイルス、アレルギーから体を守ってくれるという。
その為には大食をしない、便秘しない。日本伝統食の乳酸菌の多い味噌、糠漬け、納豆、甘酒などを摂る。当然肉食や甘いものは悪玉菌を増やすからダメ。一日に1.5~2リットルの水分を摂る。冷たいもので腸を冷やさない。腹式呼吸で腹筋を鍛えて、腹部のリンパの流れを良くする。

3) 前述の紺野義雄氏によれば、氏独自のリンパマッサージ法によって、リンパの流れをよくして筋肉をほぐせば、自分で治せることを、いくつもの具体例を図解で解説している。

4)体を動かさないと、リンパ液は流れない。一日一回は健康体操をしよう。  おわり

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